ステロイド

 環境ホルモンという言葉を聞いて危険なモノという事は何となく分かっていても、 何がどのくらい恐いかということを良く理解している方は少ないように思います。 例えば、本当にその怖さが少しでも理解できていれば、 冷めてしまったご飯やおかずに塩化ビニール製のラップをして電子レンジで"チン"なんて事は絶対できないはずです。 「えーっ」って思っている方はこのページを良く見て、身の回りをチェックチェック!

 なぜステロイドなの?

●ステロイドの作用
 体内の腎臓の上にある小さな臓器を副腎と呼びますが、 そこで作られるホルモンが副腎皮質ホルモンです。 副腎で作られるホルモンは主として、コルチゾール(糖類ホルモン)、 アルデステロン(塩類ホルモン)、テストステロン(男性ホルモン)の3つです。 その内、コルチゾールがアトピー治療に使われているステロイド剤と呼ばれるものです。 コルチゾールの働きは本来、糖類代謝と抗ストレスでありこれを生理作用と呼びます。 また、二次的な作用として、抗炎症、抗アレルギー、免疫抑制等の薬理作用があり、 ステロイド剤ではこれを利用してアトピーのかゆみ、炎症を抑えています。

●ステロイド軟膏の歴史
 40年程前にステロイドの内服薬がアメリカで開発され、 当時のアメリカではよくアトピー性皮膚炎の患者にステロイドを内服させていました。 日本へステロイドの内服剤がやってきた時、日本の大学関係の皮膚科の学識経験者は、 皮膚病を始めとしたアトピー性皮膚炎は皮膚の外部の表面だけの症状なので、 何もこんなに恐ろしいステロイドの内服薬を飲ませなくても、 皮膚の表面にステロイドを塗布すればよいではないか ということで、 ステロイドの外用剤、つまり軟膏を作りました。

 当時アトピー性皮膚炎は小学校へ行く前には治ったし、 皮膚炎が悪化してくる時期はせいぜい4、5歳からでした。 またアトピー性皮膚炎の症状の強い目立った場所は、 四肢屈曲部がカサカサになってふけ状の粉が出たり、皮膚が厚くなるぐらいで、 その他の皮膚は軟膏を塗布する必要が無いほどでした。 即ち、当時のアトピー性皮膚炎にはステロイドの軟膏も、 塗ってせいぜい2、3年間でしかも四肢の屈曲部のみのでしたから、 ほとんど副作用は問題にならなかったのです。 ステロイド軟膏が開発製造されてから、 ステロイドの副作用について多角的に専門的な研究及び報告が行われていました。 しかし、実際問題として一般の多くの臨床医の間や患者さんの間で 副作用の問題がクローズアップされ始めたのは、 ステロイドの登場から25年も経った1986年頃からです。

 ステロイドの影響と副作用

●内科的、全身性の副作用について
 ステロイド軟膏を塗れば、毛穴を通じて難航に含まれているステロイドが 体内に吸収されるのは、明らかです。 ただ、その吸収率は国際皮膚科学会ではっきりと量が決まっており、 良く使われる軟膏として (トプシム、マイザー、ボアラ、リンデロン、デルモベート、アンテベート・・・)があります。 これらの軟膏は5グラム入りのチューブに入っていて、これを毎日2本1ヶ月に60本使い、 グラム数で300グラムを続けて塗布すると、 ちょうどステロイド内服剤(プレドニン5mg)1錠を飲んだのに匹敵する量のステロイドが、 毛穴を通して体内に吸収されます。 このステロイド1錠の量は一生のみ続けても命が奪われるような副作用は起きない量です。 従って、ステロイド軟膏を塗ることによって、内科的な副作用が起こる事はきわめて少ないと言えます。

●皮膚の表面に起こる副作用
 ステロイド軟膏の副作用として一般的に学会にも認められた皮膚のダメージは、 皮膚の萎縮作用です。肝臓、腎臓、皮膚等の臓器組織は、繊維化細胞と呼ばれる細胞が、 古い細胞を吸収し、新しい細胞を育てることによって、若さが保たれています。 ところが、ステロイドを5年、10年塗っていると、皮膚の繊維芽細胞の働きが低下し、 古い細胞は残り、皮膚の若い細胞は育たなくなってしまいます。つまり皮膚の老化です。 これにより皮膚は萎縮して薄くなり、ちょっとした刺激で皮膚に出血を起こします。

●長期使用による副作用
ステロイドの強弱や体の部位により吸収率が変わって来ます。 また、ステロイドはアレルギー症状の根本的な要因を解消するものではなく、 また長期の使用により副作用が現れるので、医師による適切な指示管理と、 定期的な副作用の有無の確認をしながらの治療が必要です。 しかし、長期に渡る外用ステロイド剤の使用は、 特有の副作用を起こすことがあります。 詳しくは次の『ステロイドを安全に使うには』を見てください。

 ステロイドを安全に使うには

●ステロイド剤部位別吸収率
 次に普通、例えば腕前を1倍とした時の各部の吸収率を示します。
  この中で1倍以上となっている部分については、連用期間に注意して下さい。

各部位の吸収率 
部位 倍数
頭皮 3.5倍
6.5倍
ほほ 13倍
6倍
1倍
手のひら 0.83倍
脇の下 3.6倍
背中 1.7倍
性器 42倍
足首 0.42倍
足の裏 0.14倍


●部位別連用期間

 次に示す期間を超えると長期といえます。
 また近年は、影響を受けやすい部分については、 3日以内での使用が勧告されるようになってきています。

部位別連用期間表    
吸収率の高い部位 2週間
その他 4週間


●ステロイド外溶剤を安全に使うための基準

 一般にアトピーに使われるステロイドは次の5段階に分けられ、 症状、患部に合わせて使われます。

ステロイド含有率表
 
強さ 薬品名 ステロイド含有率 成人1日 小児1日
I群(Strongest) デモルベート、ジフラーグ、ダイアコート 0.05%前後 5g以下 2g以下
II群(Very Strong) マイザー、リンデロンDP、トプシム、ネリゾナ、ブデソン、ビスダーム、パンデル、ネリゾナユニバーサル、ユフメタ、アンテベート、アドコルチン 0.064%〜0.11% 10g以下 5g以下
III群(Strong) ボアラ、ザルックス、メサデルム、リンデロンV、ベトネベート、アドコルチン、プロパデルム、リドメックス、フルコート、リンデロンVG、エクラー、ドレニゾンテープ 0.025%〜0.3% 20g以下 7g以下
IV群(Mild) キンダベート、ケナコルトA、デダコート、ロコルテン、オリラゾンD、ロコイド、プランコール、ケナログ、アルメタ、グリメサゾン 0.02%〜0.1% 規定なし
V群(Weak) プレドニゾロン、コルテス、ネオメドロールEE軟膏、プレドニン目軟膏、オリラックスH、エキザルベ、テラコートリル、プラベックスローション、デクタン 0.1%〜1.0% 規定なし

 ここで重要なのは、Strongest(非常に強い)よりもWeak(弱い)の方がステロイドの含有率が高いという事で、 薬中に含まれるステロイドの割合が大きくても吸収される率が低いと弱いということです。 つまりステロイドの強さは、含有率ではなく、その吸収率によって決定されるということです。

 脱ステロイドとリバウンド

●リバウンド、Negative Feedback(副腎機能の低下)について
 アトピーの治療で使われるステロイド剤は本来、 人間の副腎より放出されるホルモンであり、外部から長期にわたり与えられた場合、 副腎の生成能力が弱まってしまいます。そして一旦副腎機能が低下すると、 ステロイドの使用を止めても副腎の生成能力は直ぐには回復しない為、 一時的な副腎皮質ホルモンの欠乏状態に陥り、離脱状態として体に現れます。 これは1ヶ月から長い場合は数ヶ月に渡って続くことがあり、 これが俗に言うリバウンドです。

●リバウンドによる症状

リバウンドによって次のような症状が皮膚に単独または重なって現れることがあります。

また次のような内科的症状が出ることもあります。

これらの症状が、副腎資質ホルモンの生成が正常にできなくなる、 アジソン症候群でも起きることからも、副腎資質ホルモンの生成能力に影響が出ていることがわかります。

●リバウンド症状の現れ方
 ステロイド外用剤を一気にやめると、2〜3日から2〜3週間に渡って、 個人差も大きいが、薬で抑えていたアトピーが現れ、症状がさらに悪化し、 皮膚が割れ強い匂いのする黄色い体液がでて耐え難い痛みや痒みにおそわれる。 また、強い痒み、皮膚の乾燥、かさぶた、糜爛等の症状が繰り返され、 眠れない状態が続く場合も多い。 これらの症状は1回だけの場合や2〜3回周期的にあらわれる場合等個人差がある。
 また、リバウンド症状が無くなった後も、 ステロイドホルモンが皮膚組織に吸収されたまま残っていると起こしやすい 二次感染(単純ヘルペス・カビ)等の細菌感染を伴う事が多い。。

 


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